第七話 過去の話と…翌朝の出来事

 午前0時…もう今まで今日だった日は昨日となった頃

したくも無い豹変した双子の接待をする為

二階にある双子の部屋に来ることになった


「…トロイさん、あの人と一体どんな話をしてたんです?」

「込み入ったとか言ってたけどさ、一体何なの?」


「一応軍事機密って感じだから言えんな」


「私たちの出し物見て思いついた、ちゃちな思いつきで?」

「…ばぁっかじゃない?そんな思い付きが軍事機密なわけ?」


「そこを突かれると痛いけど、そういうことだな」


その言葉を聞くと2人は目の前で内緒話を始める

それも1、2分ぐらいで終わり、双子はまっすぐ俺の方を向いて言葉を放つ


「「ヨハンとはどんな関係なの?」」


ハモったその言葉には感情は無く、いや憎悪の暗い何かはあるのか

目からも光がうせ、子どもの癖にエライ殺気立っている様に思える


「今日あったばっかの少佐さんさ…」


まぁ嘘はついてないが、どうも軍属と言うこともあってか少佐と俺の関係を

疑っているようだ、こいつらはあの少佐が嫌いらしいからな


「「本当に?でもあっちは『嘘』ついてたわよ」」


何の話だ?向こうが嘘ってどこをだ?まぁ不用意なことを言った等の

簡単な授業を受けたりもしたが…


「「あのヨハンに、スクラップ記事作成なんて趣味無いのに」」


新聞…確かにスクラップブックの趣味がって言ってたが…それが嘘?


「「彼方の昇進の件も含めてなんで新聞って言ったの?」」


確かにそうだったな…俺としたことがあの可能性をうっかり見落としてた

奴だクレマンにしてもそうだが近づく奴みな疑うべきだというのは

解っちゃいるが、私的優先事項が多すぎてつい失念してしまうし

何より“奴”が同郷にいてどうやって戦争しろってんだよ

でもあの少佐…どこと無く疑ってしまったな

ギュンターの友人らしいが…いや一から人生やり直してたら

ここでの自然な交友関係も出来るか…

会った時には胡散臭い奴ぐらいには思っていたからつい詮索を入れてしまったが

…不用意…詮索を入れすぎて逆に疑われたか?

『でも、前線で銃を握るより貴方にはもっと向いた仕事があるのだ

 …と私の上司との会話の肴に貴方のことを出しておきましょうか』

これもついいいように捉えたが、少佐が“奴”でなくとも上司が“奴”なら…

そもそも同じ国にいるなんて考えてなかったんだもん…あのへんな生き物め…

そうかありえるのか…そういうこともありえるのか…

考えたくは無いが…そういうこともありえるのか…

俺が思考してる間も双子は色々述べている

中々面白い推理だ、憎んでいるから邪推してる感は拭えないが

地方紙はここ首都には精々国立図書館にだけしか来ていないし

取り寄せるにしても、そんな労力かけるか?

ヨハンは現在は情報将校だから俺の情報なんていくらでも手に入るのに?

等々…俺の知らない情報をくれるお嬢ちゃんだ


「「きいてるの!?」」


おっとなんだこのやり取りは一昨日の昼にもあったな

女ってのは姦しいから適当に喋らせときゃ気が済んでさっといなくなると思えば

こんなキラーパスを飛ばしてくる、が今回は一つ俺も気になることが出てきた


「そういや、お前さんらのこと詳しく聞いてなかったが、ヨハンとも知らない仲

 じゃ無い様だが、一体どういったご関係で?」


ちょいからかった口調でキラーパスにキラーパスをぶつける


「「幼馴染よ」」


…?幼馴染?おさななじみ?幼い頃からの馴染みって事だよな?

兄貴呼ばわりしてるギュンターと同い年ぐらいだからいっても24か5だろ?

でもこの双子はどう見ても11か2って言った所だ

うーん見た目が幼く見えるだけで実は…?いやいやないだろ

いくらなんでも幼すぎるし、可能性を否定するわけじゃないが…


「随分若作りなんだな…」


「「そう?ありがとう、今年で13歳になったわ」」


…?ちょっとわからないぞこれ?何だこれ?高度な謎々か?


「「困ったわおバカなトロイには難しかったみたいよゾフィー」」

「「そんな事言ったって、馬鹿に対してどう言っていいか解んないんだもん」」


オイオイこいつ、ハモりながら会話しだしたぞ………!


「元々一人の人間だったのか?」


我ながら馬鹿な言葉が飛び出した、異常なまでにハモったり

ハモってからの双子の言葉がまるで一人で喋ってるように思えるほどだ

だからといってとっぴ過ぎるな


「確かに、俺は馬鹿だったなこんなこと…」


双子の目は今まで見たことのないくらい大きく見開いている

大きく見開き恐ろしく刺すような視線を俺に向ける

そこから今までのような息を合わせたようなハモりではないが

早口の小声もやはりハモっている

お互いがお互いに息を合わせてって感じではなく、完全な独り言なのに


「「…トロイ・リューグナー、お前何者だ?」」


双子は俺に指差しいう、お前は何故魔術に興味を持ったのだ

お前は何故…やつは俺の正体を疑っているようだ

まぁ恐らく、ただの粗野な軍人って思ってたら意外な方向に敏感だったのを

脅威に感じたんだろう、そういえば俺を探してた風でもあったし

新聞記事とかも持ってたしな

そこを考えると、こいつらの豹変っぷり…


「ただの軍人さ、ただのな…悪いがお前の怨恨にも興味はないし

 あの少佐の野心にも興味はない、お前が怒るのは勝手だが俺を巻き込むな」


はっきりいうと、双子はさっきまでの憑き物が落ちた様な…

少なくともさっきまでの殺気立った顔ではない


「だったら教えて…本当にヨハンとは関係ないの?」

「ヨハンがあんたを使って悪巧みをしているんじゃないの?」


ヨハン、ヨハン…ギュンターはヨハンを善く言うかこいつは悪く言うな


「言ったとおり、ある軍事面での戦術に組み入れたいから技術的に可能なのか

 もしお前らだけの物だったら、兄貴に会ったあとにお前らに事情を話して

 軍にでもなんにでも、入ってもらって技術研究に

 参加してもらうつもりだったが、ギュンターの方が適任で尚且つ

 その職についているから、彼に話それ以上漏れないように他の人間には

 喋っていないだけだ、これ以上ないくらい、こっちの事情で動いてるよ

 この私はな、それでも聞きたいならギュンターに聞け…まぁ話しては

 くれんだろうがな…」


「どうして?そういえるんですかトロイさん」

「そうだよ、あの魔術は私らも知ってるんだから隠し事なんて」


「彼は俺の話に乗ったからな、お前は気にいらんだろうが

 ヨハンの役に立てるって言葉では言ってたがな

 お前らが見てた温和だけが取り柄の男の眼じゃない

 使命を宿したいい目をしてたぜ、だから俺が秘密を守ってくれって

 言って、了承した以上お前さんらにだって喋らんさ、ヨハンにもな」


そう言い終えると今度は双子の目が潤みだした

その潤みは次第に目の淵に涙をためるまでにあり

涙は大粒の珠になり淵から零れ落ちる

そうして2人は大きな声で泣き出したのだ

その声を聞きつけ駆けつけた執事が部屋に入ってきて

俺と双子の姿を見て何事ですか?と言う顔をした俺に訪ねてきたので

ある程度飛ばして、ヨハン絡みで感情的になったので話し相手なってた

と説明した所、簡単に納得し執事は引いてくれた

唯一の救いは当事者の片割れのギュンターが起きて来なかった事だ

あいつが来たらここはもう混沌としただろうなきっと


泣き出してから数分がたった、双子はお互い抱き合って泣いている

嬉しいのか悲しいのか判断がつかないが、兎に角泣くほどのことだったんだろう

そして、少しずつ泣き止んでいく…どうやら落ち着いたようだ


「あーもういいかな?俺は寝たいんだが…」


そういって去ろうとすると服をつかまれる


「「トロイ少尉…聞いて欲しい…知っておいて欲しいことがあるんです」」


そういうと、逃がすまいと言う決意が感じられる執念で俺の服を掴み

そうしてとくとくと話し出す、もう夜中の1時を回っている…

俺はすばやく済ませたいのでおとなしく聞くことにした…仕方ないよな



“エレーナ・プラシューマ”

それが彼女の本当の名前で双子はサブリナ、ゾフィー・ルドヴィング

ギュンターの親戚にあたり、昔から仲が良かったらしい

そして当のエレーナは、ヨハン、ギュンターと幼馴染だった

彼ら三人は衰退した魔術士の家系でかつ貴族と言うこともあって

親の世代からの付き合いで三人でよく遊んでいたらしい

当時はギュンターが一番利発で魔術やその家系のことに興味があり

色んな悪戯に応用したりいて親を困らせる代わりに期待もされていた

ヨハンはと言うと一番魔術で栄えた家系の末裔にもかかわらずさして

魔術魔法には興味を示さず、科学や化学に興味があった

エレーナはそんなあべこべな2人の間でその関係が心地良く思えていた

それも、時が経ちそれぞれが大人になっていくにつれて

関係が変わっていった、思春期の始まり

エレーナはギュンターに恋をした、ギュンターもその気持ちに応えた

それからは“二人”だけの時間が増えていった

そのとき、一人にされたヨハンは何を思ったんだろうか

当時の彼女にはそんな事を考える暇はなく彼との時間がただただ楽しかった


そして運命を分けるあの日、ルドヴィング家の双子と共に

汽車に乗って故郷のブリニストからヴェルムクリントに向っている途中

路線に“何か”あったのか後にその事件を調べた時には

線路のレールがその場所の関係か破断し上に向って歪んでいたらしい

当時の鉄道局の現場責任者が責任を負うだけで事件そのもの済んだらしい

俺の感覚ではもっと騒ぐべきだとも思ったが

当時のインフラ状況ではよくあることだったし、何より当時は帝政で

そこまで騒げるはずもなかったそうだ、フェルキアが共和制になるのは

この事件以降まで待たなければならないらしい

もう一つ付け加えておくと、魔術師で貴族といっていたエレーナたちの家系だが

ほぼ没落した田舎の貧乏貴族というのであまり相手にはされなかった


だが簡単にすまなかったのは事故にあった犠牲者の方だ

事故が起きた場所が山の側面部に路線を敷いた場所だったので

脱線即滑落という状態になり乗客の殆どが死んでしまった

エレーナと双子もその死傷者の一人に数えられる所だったが

そんなところに偶然かは分からないがヨハンが乗り合わせていた

ヨハンは彼女の命を使って瀕死だがまだ息をしていた双子に分け与えたという

どうも、奴の家系は一番魔術の血が色濃く失われたとされた秘術もいくつか

口伝か書物としてあったんだろう、それを実践したのだ

彼女はその所為で息絶えた


次に目を覚ました時は不思議な体験をする、自分が二人いるのだ

命は双子に与えられ、意識は二人に行き渡った

双子は間に合わなかった、その結果エレーナが双子の体に二分割して入るという

怪現象になったそうだ、そうして一つの意識で二人を動かすという

奇妙な感覚に四苦八苦していると


「気分はどうかな?エレーナ」


突然名前を呼ばれ声のした方に目をやる

ベッドの横には無表情で双子を観察するヨハンの姿があった

彼女は術をかけた本人だからわかったのかと一瞬思ったそうだが

そうではなく、双子の動きがまるで不器用な人間が

左右の手に違う動きをさせようとして結局同じ動きになってしまう

そ言う動きが見られたからだと、ヨハンは彼女に説明したそうだ

その、今まで忘れていた男の冷たい視線に腹を立て怒鳴りらした

だがヨハンは彼女の罵倒なんぞ気にすることなく


「そのハモる癖は直しておきなさい、いくら双子とはいえそれはないぞ」


彼女はその顔に悪魔を見たと言う

彼女の聞いた言葉は彼女の人生を全て奪うような物だった

彼女の体は損傷が酷くそのまま葬儀に出され

今棺に入っているエレーナの亡骸にギュンターが泣きすがっている姿を

見届けてきたそうだ、その言葉に愕然とした


「「私は生きてる!彼にアルに伝えて!ヨハン!」」


彼女の懇願に冷たく、君は死んだんだ今日からはルドヴィング姉妹として

生きていくんだと言い放ち、彼女の言葉は一切聞かない


「「なら、アンタが私やこの子達に何をしたか全部アルに話してやる!」」


怒りに任せて彼女は罵り続ける、がそんな言葉に眉一つ動かさず


「全く、嫌ってるのは解っていたが幼馴染で命の恩人だぞ

 先ずはお礼の一言もあって良い筈だろうに」


起伏ない言葉で返すだけだ

そして、その言葉の続きには、彼にはもう全て伝えてあると

汽車に自分も乗り合わせていて事故にあった際、双子とエレーナのどちらかを

救う手段を自分は持っていて、その結果エレーナを“自分”の判断で見殺しにしたと

その全てをギュンターに話したのだと

そしてギュンターはそれを受け入れ、ヨハンを許したのだと

その時、彼女は書類上からも、家族からも、恋人からも死んだことにされたのだと

その残酷な現実を突如負わされる羽目になったのだ

何故どうして、その問いにあっさりと答える


「答えは簡単だ、三人とも生きていたが虫の息だったそして

 君の体は酷く傷んでいた、もし生きていてもどうせあの体なら

 それを苦に自殺していただろう…それに

 アルフレッド・ギュンターは君を聖女のように愛でいたからな

 君が心身ともに醜く生きて、彼が幻滅しないように

 君は双子に命を与えて死んだ、私はそうした方が誰も不幸ににならない

 そう判断した、無論彼にもそういったよ彼女がそう望んでると思ったってね」


その証拠にギュンターに会ったときに、彼はエレーナを聖女のように語っていた

そして双子たちに君たちの中に息づいている彼女の命を忘れないであげて欲しい

そう双子に言い聞かせ涙を流していた

その言葉は彼女の心を完全に折った…エレーナは死んだんだと悟らずにはいれなかった


それが大まかな事情であるが、肝心の魔術ってなんだという俺の問いに

エレーナは知らないの一言だった、とにかく憎いのだという

全て奴が仕組んだんだとか、その度にでもそれ事故だったんだろうって聞くと

ぐぬぬといった顔になる、完全なヒステリックにも見えたが

まだ何かありそうな感じでもあったが言いたくないのであれば

それも良かろうだが抜粋した恨み言に関しては

声を大にして述べなければならない

 

「くっだらなねぇ!」


上記は俺が話を聞いてなるべく整理して書いたものだが

実際はもっと恨み節が聞いたアホらしいものなんだよなぁ

しかもステレオ音声で…


「「下らないですって!」」


俺の発言にまた怒りの顔になるが、あの奇妙な豹変は御免なので

俺の方でイニシアチブをとらせてもらおう


「まず、生きてるんだからそれで良しとしろ!、俺だって“一回死んで”

 片足無くして生き返ったんだからな、お前だけじゃないぞ、そういうの」


そうだ俺もビアへロとかいう不細工な人形みたいな生き物にチャンスをもらったんだ


「それにな、過去のことばっか拘ってるがある意味チャンスなんだぞ

 男は基本馬鹿だ、ここが重要で女が二人自分を好いてくれるなんてウレシーし

 その二人のどちらかを選ばなくていいなんてサイコーだって思うだろう!」


俺的には遠慮したい限りだ、正直クレマン一人でも手を焼いてるのに


「「言わせてお「更にいえば!!」


双子の言葉を封殺する、これ以上こんな話に付き合うのは御免だ


「ギュンターが以前のお前を好きで落ち込んでるんだったら!

 お前が更に塗り替えてやるぐらいの気合で好きになれよ!!」


俺だって心機一転でこの地で頑張ってんだからさって、俺なりの応援

だが俺の言葉に双子の顔はどんどん真っ赤になっていく

怒り具合さっきと違い少し年相応の怒り方に見えるな

普段であればここで引く所だが相手は“大人”だ引くわけにはいかんな

子ども相手にと遠慮していた鬱憤も晴らそう


「男なんてな、大体が女のオッパイが好きなんだよ!

 お前もオッパイでかくなってから再アタックしてみろ

 ギュンターの見る目も」


俺の言葉をとめたのは左右から飛んできた子どもの掌そうビンタだ


「「もういい!!でてけ!!ばかぁ!!」」


涙を流しながら双子は叫んでくる、それに対し俺は馬鹿って言った方が

馬鹿なんだよって大人の優しさで教えてやったら

枕や小物をいっぱい投げてきた


こんな全くもって納得いかない形ではあるがあの変型双子型成人子どもから

解放されたのだった、明日はってか今日だけど9時にここ出るんだよな

今はもう4時だよ…さっさと寝なくては…だが

あの双子の話…面白い話ではあったな、ヨハン・ファウスト

なかなか面白い男じゃないか、そう考えながら俺は短時間の眠りについた

…もう今日は昼まで寝たい、そう思わずにはいられなかった



翌日しっかり起こされ、朝の支度をし予定通り家を出て

俺は馬車の中にいる、双子はまだ寝てるらしい…

ギュンターと共に技術省の寂れた魔術部に向っている

そしてその間、ギュンターに寝不足だと告げ

少し目を瞑って仮眠のような状態をとっている

そうその間思い出すのは昨夜のことだった

そう、昨夜突然豹変した双子に絡まれた事件だ

思い出すだけでも馬鹿馬鹿しいし、女はあんなことであそこまで

豹変するのかと思うとやはりくだらない、今日からお前の人生どころか

この世界全てひっくり返してやろうっていう俺の野望が動こうといういうのに

あんな下らないことで、おれ野睡眠時間を割きやがって

腹が立つので帰ったら、大人気ないほどの意地悪をしてやろう

相大人気ないな!

そのような、下らないことを考えてなら過ごしているとギュンターに起される

どうやら、目的地に着いたようだ

少しだけ眠れたがまぁ仕方がない


「それでは、いくとしますか」


俺は起こされてすぐに、馬車から降り省舎へと入る

小国とは言え立派な装飾だ、だがギュンターの顔を見るたびに

なにやら不穏な感じのひそひそ話の声が聞こえる

そういえば今ギュンターの立場は最悪といっていたな

この中の人間性は装飾に劣る下卑た物のようだ


「気になりますか?」


その声を気にした俺に気が付いたのか、ギュンターが尋ねてくる


「まぁ多少は」


素直にかつ素っ気無く返す、正直他人の評価なんざ簡単にひっくり返るからな

価値観だって然りだ、この世で変わらないものと言ったら

生きてる限り死ぬって事と…

俺の意志ぐらいだろう


「以前の私なら、気にしてましたが今は気になりませんよ私は」


やる気に満ちたギュンターの目はキラキラ輝いている

良い顔だ、昨日の温和だが抜け殻のような優男とはえらい違いだ


「あっと…」


どうしたんだろうか、ギュンターの足が止まる


「どうしたのです?」


「失礼リューグナー少尉、今回の件とは別に用件があったのを失念していました」


あらら


「申し訳ないですが、少し待っててもらえますか?」


「それは構いませんが…」


「本当に申し訳ない、あっそうだ、少尉は魔術等に興味がおありでしたよね?」


「はい、それは…」


「それでは、帰ってからの会議の際我々の会話内容をより理解していただく為にも

 空いた時間にレクチャーを受けてみますか?、ちょっと時間がかかりそうなので」


…昨夜聞きそびれた事とかがまさか聞けるとはな、ラッキーだな


「それは、ありがたい限りですよろしければお願いします」


ここでは色々反応する必要があるが、まぁそういうような取り繕いより

先ずは俺の知りたいことが知れることに感謝だな

軍属的な段取りの悪さ非難とかそういうのは抜きにして素直に

その申し出に従うことにした

そうして案内されたのは談話室のような個室であった

何でも、入館許可証の発効に不手際があったとかで

ギュンターのポカと含めてここに案内されたのだ

数分後、ノックがする


「どうぞ、あいてますよ」


別にここで警戒せずにいて殺された何てことないだろうから

自然とこういうのんきな言葉が出る、がこれで殺されたら面白いな…

ってんなわけないか


「失礼します…」


入ってきたのは、銀色の髪が長く華奢でまだ10代ほどの女性であった

言いたかないが、クレマンより美人だな、これぐらい美人だったら

さぞみんなからモテモテだろうな


「私、ギュンター卿より魔術の説明を任された『ヴォルフガング・ジークリット』

 です、ちなみに私は名前を聞いての通り“男”です少尉どの…」


どうやら顔から俺の考ええてることが漏洩していたようだ

なんだか妙な念押しをされてしまった…

かの…いや彼ジークリットはとにかく女に間違われやすく

しかも23だと言うのに学生に間違わられているうえ、何名かは

男でもかまわないと言って来る者までいる始末だという

まぁわからなくもない、性別を聞かなきゃ俺もお近づきになりたいぐらいだ

まぁそれはそれとして


「そのなんだ、ジークリットさんそろそろ本題に入らないかな?」


「少尉!ボクのことはヴォルフ…ヴォルフガングって呼んで下さい少尉…」


なんだこのおん…男はいきなり、保護欲をそそるような男を堕落させるような

声を出しおって…でも男やン…トロイ落ち着け…


「苗字は…女性名と同音異字なんで違うってわかってても嫌なんです」


…ん?あーそういうことね…あーはいはい

俺はそういうの昨夜でうんざりとか馬車のなかで言ってたのにね

でも頭一つ抜けた美人だが『男』なのにね…俺と来たら駄目だなぁ


「まぁそれは、自然とそう呼ぶようになるさ君の見た目にはまぁ…同情するが」


「少尉にはわかりませんよ!そんな男らしい少尉には…男らしい…少尉には…」


うん!わかってる!!コンプレックス刺激したから涙目なんだなわかってる

でもそんな顔止めような!個室だからよかったもののオープンな場所だと

絶対大変なことになるからな!


「とりあえず落ち着いたら…落ち着いたらでいいから話してくれ」


その言葉から数十秒後、いつものことなのか立ち直り毅然とした顔つきになる

最初っからそう言う顔をしろよ


「ギュンター卿から話しは聞きました、あの人の役に立てるなら私も出来うる

 限りのことをしたいと思います、では少尉これより少しの間野お時間ですが

 不肖ながら私『ヴォルフガング・ジークリット』がご教授させて頂きます」


さて、ここからは真面目モードでしっかりとお話を聞かせてもらおうか

魔法のことを!!


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