第十一話 本心後編
あー恥ずかしかった…まだ何もしてないのに
夢や希望を語るのは本当恥ずかしいもんだな、だが
意外だったのが、この男…いや俺の体か…トロイ・リューグナーって奴は
どうも素行がよろしくないみたいだな、俺自身の顔なんて忘れたが
ここ数日あった人間の印象が良くないようだ…まぁ変な反応をする奴もいたが
兎にも角にも腹を割って話したから完全な疑惑の目から半信半疑に持ってこれたが
まぁ、奴が昔話をしたがるなら、エレーナの件もあるし聞く価値はあるだろう
「すまんが…」
「なんだ?今更命乞いでもしたくなったのか?」
おっと忘れてた相手は銃を持ってて、俺は撃ってもいいって言ってたんだったな
「いや、話を聞くだけなら、このソファー長いだろ?横になって聞いてても…」
「好きにしろ」
ふう、好きにさせてもらうさ、そう好きにな…
「まず、確認だがお前昨晩はあの双子から色々と話聞かされたんじゃないか?」
「まぁな、ヨハン君がお前の手柄を横取りしてるって話だ」
例の剽窃の話題から来てくれたのは有り難い、このままアイデア横取りにされて
それを教えてもらえないまま殺されたんじゃ、あんまりだからな
「そのことに関してだがそれは彼女の勘違いだ、私には彼のようなアレンジ力は
無いし、そもそも分野が違う、彼の功績は彼のものだ
私とは違うジャンルの人間だ、彼は現実に生きて私は…」
「夢に生きてる?」
そう途絶えた言葉に付け足してやると、少し困った顔をしている
正直このギュンターという男、どんなに怒ろうが凄んだり怒鳴ったりと
するタイプじゃないな、現にこの体の素性を知って俺に敵意をむき出しな感じで
話していたが、簡単にボロと言うか素が出てしまう
そもそもが人を疑うタイプじゃないんだが、あの双子や友人なんかを守るため
必死だったって訳か…って俺自身そんなに調べきれてなかったが
トロイってどんな男だったんだろうな…今夜生延びたら聞いてみるか
「…なので、“私の発案”を彼が剽窃しているというのは彼女の
勘違いだ、それと今回の君のアイデアに関しても言った所で彼は
笑うだろうさ…“ありえない”ってね彼はそういう男だ」
なるほど
「まぁ、私と彼の違いを理解させる為に教えただけだ」
鏡がないからわからないが、そう付け加えさせたくなる顔を俺はしていたらしい
「私がまだ十代の少年だったころ、2人の子どもとであった…」
…ヨハンとエレーナか、俺が黙って聞いてるのを確認しつつ
淡々とギュンターは話を続けた
元々、ファウスト家とギュンター家は繋がりがあったが
過去の金策により貴族の地位を手に入れていた両家は
新たにプラシューマという貴族との繋がりを持ち
表は田舎の貴族としての顔を手に入れ、裏では魔術の研究にいそしんでいた
そんな関係が続く中で三人は知り合ったのだ
一人はアルフレッド・ギュンター
そしてヨハン・ファウスト
最後にエレーナ・プラシューマ
三人の出会いは親同士の引き合わせで最初はぎこちなかったが
それも時間と幼さゆえの柔軟性が解消して言ってくれた
ヨハンは現実的で魔術は出来たが否定的、エレーナは絵が得意だった
ギュンターは空想癖が強く魔術に魅力を感じていたが根暗ではない
逆に明るく手品が得意で人をひきつけるものがった
三人はそれぞれ違う価値観を持っていたが、それぞれ友情をもてる
そんな間柄だった、だがその関係もある日を境に替わっていった
思春期、幼い友人はお互いが異性であると気が付き始める
ヨハンは口にはしなかったがエレーナのことが好きだった
そして、エレーナの好奇心はというとヨハンではなくギュンターに向いていた
当のギュンターはより深い魔術の存在に興味を持っていた
そんな折ファウスト家が不慮の事故でヨハンを残し居なくなってしまう
その結果、三人の関係が替わっていく
ヨハンは遠く首都にいる父の友人に引き取られていき
残ったのはお互いに異性として意識しあった男女だけになった
ギュンターはエレーナに特別な感情を抱き交際を始めることになる
ヨハンが彼女に恋心抱いていたのを知りつつ…
ギュンターはエレーナとの交際の合間も文通でヨハンと連絡を取り合ってた
この事に関しては、最初はエレーナにも話していたがその内
エレーナの瞳に興味がないように感じられたので
ヨハンの話はそれ以降エレーナの前では話さなくなっていった
その頃から二重生活のような形をギュンターはとっていった
エレーナと恋人としてのひと時を過ごし
その合間を縫ってはヨハンへの手紙を書き続けていた
こちらの方には最初からエレーナの話題は書かなかった
どうしても拭えない後ろめたさがあったのだ
そんな理由からか、ヨハンとギュンターには魔術と科学で議論する間柄になった
ヨハンは最新の科学を学ぶ機会を得てそれをギュンターに話すと
ギュンターは魔術的見解と自身の空想で意見を言う
これはいわば思考遊戯のような物でお互いにその事は解っていたので
そこから新たな発見やアイデアを思いついてはそうやって過ごしていた
ヨハンは学んだ科学的再解釈で魔術で言う呪言の類を心理学に応用したり
ギュンターは代々伝わる魔術を科学的再解釈で見直していった
エレーナがそれを後にヨハンの口から聞くこととなり、剽窃していると思ったのだ
後ろめたい気持ちがあった二重生活に亀裂が入り始める
ヨハンは首都の学校で、より現実的に成績を残し
エレーナも美術の道を進むことになる
幼馴染の内、自分ひとりだけが落ちこぼれていったのだ
自分の好きだったものは何一つ自分の役には立たない
そんな劣等感の中更に追い討ちをかけるように、二人の好意が
ギュンターの翳をよりいっそう濃くしていった
エレーナは一途に愛を唱えその魅力は素晴しく、その幸福感は本物だったし
ヨハンとのやり取りも悔しいが好奇心が勝りやはり嬉しく思えるのだ
惨めな自分を見せまいと明るく社交的に振舞うが心は深い闇色に染まっていく
無邪気な空想はいつしか邪悪な妄想へと変質しその一部を表に出してしまった
ゆりかごの君と呼ばれる魔術士が行った大禍であった、これは実際に起きたことだし
これが出来れば自分も何か残せるのではないか?この妄想が
ギュンターの無邪気な可能性を殺し残ったのは、劣等感の固まりような痩せこけた
優男という抜け殻だけだった
そんな頃だ例の事故が起きたのは、ギュンター遠縁の双子とエレーナが事故に遭い
その汽車にヨハンも乗り合わせていたのは
当時のヨハンは学者の卵であった特質的な力はあったのだという
ファウスト家の秘術、それが命の伝搬というものであった
詳しい原理はギュンターにも解らないのだが、命をエネルギーと考え
今で言うと自動車の燃料を移し変えるような感じだろうか
それによって、エレーナの命を双子に移して命を救うことが出来た
だが、ヨハンはエレーナを愛してたんではないか?
逆にあそこに乗り合わせていたのが自分で、その力がもし仮にあったとして
その行為を出来ただろうか?
偶然の産物とはいえ、そんな過酷な選択を彼にさせてしまったのだ
ギュンターの心に更に重たい十字架がのしかかる
ヨハンは実直で正直な男だった
自分のしたことを全てギュンターに告白しその審判を受けようとしたのだ
「私は彼を許した、憎めるはずがないじゃないか…親友を…同じ人を愛した人を」
ギュンターは少し俯き、俺から視線をそらし握り締めた銃に目をやる
「私はね、トロイ…彼女が死んでホッとしているんだ…あれだけ愛してた
私の夢は薄っぺらだったかもしれないだが、どんな私も受け入れてくれた
そんな彼女が死んだことに…私はね…何故か…ホッとしたんだ…
なぁ…トロイ…どうしてなんだろうなぁ…君には解るかいこの気持ちが…?」
そういうと、銃口を俺に向けた、答えなければ殺すといった感じだ
まぁそれはいいが、この顔はよろしくないないな昔のことを話しているうちに
随分小さな人間になっている何とかしないとな…
「わかるさ、いや実は解りたくもなかったんだがな」
ギュンターの問いかけに俺は答える
「女ってのは、人にもよるが眩しいもんで自分の暗い考えが正しいと信じてても
一緒にいるうちに思うんだ…子どもっぽい考えだったってね
思春期的な考えだけじゃない、自分の世界で生きてきた人間ほど
誰かに惚れるとそうなる、自分の世界がその相手との天秤にかかって
軽くなっていくのがわかるんだ、この世に発現してない夢には重さがないからな
その軽い夢に比べたら、彼女がいる世界の方が本物だってね
誰かに否定されるのはまだ耐えられる、だが最後に裏切るのはやはり自分だ
自分の夢を裏切るのは自分だけだからな、愛に生きようとして
これまでの自分を裏切りかけた…彼女の死はその天秤を夢にほんのちょっぴり
傾けさせたのさ、そもそも天秤にかける価値もない女なら関心は持てない
天秤にかけるほどもない夢ならアンタはただ嘆いてただけだろうさ
夢も愛も本気でやってそのせめぎ合いで出た安堵のため息だったんだろうな
わかる人間なんてほんの一握りだけしかいないがな…」
俺の言葉にギュンターは不思議な顔をしていた
そのなんとも言いがたい顔でじっと俺を見ていた
「君にもそんな人がいるのかい?」
驚いたのは心中を言い当てたことより俺に女がいたことの方だった
「…恋人とかそんなんじゃないが、それに近い友人が…ね」
そういうと満足そうな顔をしたそして
「君の戦争継続案、気に入ったよ」
好意的意見だったが顔がよろしくない、ほの暗い人間の顔だ
こいつ、昔の妄想を実現できるとでも思ってるらしいな…
「君が戦争を広げ僕はその「ギュンター!テラスへ行くぞ!!」
ギュンターの言葉を遮り、俺はテラスへ出たそして後を追うようにギュンターも
テラスに出てくる、夜の帳は落ちそこには星が雨粒のように無数に
夜を飾っている、俺はテラスの手すりに腰掛にギュンターに問う
「ギュンター、この星空をどう思う?率直な意見を聞きたい」
唐突なこの質問にギュンターは戸惑う
「…綺麗な…星空だ…」
率直な意見だ…
「率直な意見ありがとうギュンター、俺が一度死んでこの世に無理やり
生を受けた話はさっきしたな」
「え?え、あぁ」
ギュンターは有無を言わせない強引な話題の誘導に少し戸惑う
「俺は死んだあと、あの星になっていたのだ、正確には星に見える
死後の案内人の後ろをついて歩いていっていたんだがな
人は死ぬと永遠と思える時を歩き続け、全て忘れた頃の
また改めてこの地に落ち人生を歩む
命とはその繰り返しだ、人生を歩み、死後もあの星の海を歩くんだ
俺ともう一人は、野心を抱いて流れ星としてこの地の堕ちてきたんだがな
だからお前が妄想してる過去の大禍なんてありえないんだ
この地に人の怨念なんてこびりつかないんだ、命の循環は
人間が思っているよりもっと、ずっとドライなんだよ」
ギュンターは豆鉄砲を喰らった鳩のような顔をしている
いきなり言われたんだから当然だろう、だがこっちとしては
生贄を稼ぐ為の戦争なんて無駄なことしたくないからな
はっきり言っておこう
「待ってくれ…、ならあの大禍は全くのでたらめなのか?」
この男理解力が恐ろしく高くて助かる、あれこれ聞くより
こっちが言いたい質問をしてくれるのはありがたい
「…実際、人は死んで言語統一が出来るレベルまで人口が減ったんだ
何かしらあったのはたしかだ、そしてそこに関しては方法はどうあれ
何を使ったかはおおよその見当がついている」
その言葉にギュンターは更に驚く、目を丸くしすぎて今にも零れ落ちそうだ
「解るのか?」
「前の世界の記憶かな、推測の域は出んが今でも俺が知ってる世界の
技術より魔術は進んだことが出来てるしなもしかしたら、もしかしたら
科学とは違ったアプローチで“アレ”を使えるようにしたのかもな」
核というとざっくりだが、ウランに代表される放射能鉱物…
これを施設を使わず使えるようしたって言うんなら本物の魔女だな
そのゆりかごの君とやらは
「トロイ、教えてくれ!それは何なんだ!?」
ギュンターは食い下がって来る、当然だな奴だって知りたいだろうが
それを教えるわけにはいかないわな、もしこの知識が俺の口から漏れたら
“奴”を判断する方法が失われてしまう
「ギュンター…それは出来ない、二つの理由からだ
一つはその力はまず間違いなくパワーバランスを狂わせる、かつては魔法で
すんだことも科学が発展し続けている今の世ではいずれ使えるようになるだろうが
今は早すぎる、もしお前が知ってその研究に没頭したら全てご破算だ
俺の計画も何もかもがな、もし生きてる現れなかった場合はお互いの
いまわの際にでも教えてやるよ、それで一つ堪えてくれ」
一つ目を言うとギュンターはテラスから室内に入っていく、すねた感じだ
この感じ、エレーナもとい双子にもつうづるものがあるな
ドカッと椅子に座ると不機嫌そうに
「じゃあ、二つ目はなんなんだい!?」
やっぱかつての目標に関しての情報がもらえないことに苛立っているようだ
まるでねだったお菓子がもらえなくってすねたガキみたいな反応だな
「こっちが大事になるんだが俺のほかにもう一人、この世界に堕ちた男がいる
そいつがその技術をこの世で一番欲している、何より俺はその男を殺したい
その為にも見極める為にはこの技術情報の漏洩は防ぎたいのだ」
このことを話すと、拗ねたガキの顔から少し大人に戻る
「君にとって、その男とは何だ?」
「友人で、よき理解者で、何よりこの世で唯一の俺の敵対者だ」
その言葉はギュンターにどう伝わっただろうか
「解ったよ君を信じよう、トロイ・リューグナー少尉
君のささやかな狂気と見てきたという生死観を
だがいまわの際の件は忘れないでくれよ」
思ったよりあっさりだな…
「思ったよりあっさりだな」
つい思ったことがそのまま口に出てしまった
「君には救われたからな、まぁそのなんだ…疑って悪かったよ」
何だこいつそんなこと気にしてたのか
「それに、君の話を聞けて私も改めて自身の“夢”に向き合おうと思う
色々焦って空回りをしてしまって、遠回りしていたが
色々話せてよかったよ、ありがとうトロイ…」
…本当いいやつだな、色々大変な青春時代だったがこの男にも
進むべき道が出来たということか
「気にするな、お前さんを利用してるという点ではあながち間違いじゃない
俺自身、特に何かが優れてるわけじゃないからな、前線の作戦本部に戻れば
今度は“戦術”で優秀な人間を誑し込まなきゃならんのだ」
一応お目当ての男はいるんだが…まぁ骨が折れる作業ではあるわな…
「そうか、私はてっきり君は何でもできる人間だと思っていたよ」
「まさか、元の体が大層馬鹿なおかげで、ここ数ヶ月はずっと読書だったんだぜ
歴史や地理の勉強に追われててな…おっとそうだ忘れる所だった」
そういうと俺はギュンターに岐路の途中思いついたプレゼンテーション案を話した
あの双子のおかげで随分遠回りして忘れる所だった
「言ったそばからまたそれだ、そんなこと思いつくなんてたいしたもんだ
だがその方法は面白いよ、それにそれが上手くいけば恐らくだが
作戦に対し疑問視も不安視も出来ないだろう、わかったそっちは私が手配しよう
君は説得と人材確保に尽力してくれ」
ギュンター…また少し顔つきがかわったな、本音を話せてすっきりしたのか
まぁ告白衝動があったのはお互い様だったからな
その後の話だが、寝るには少し勿体無いと思ったので、お互いに話し合うこととした
今度は昨夜同様酒付きで、まぁ素面でアレだけ話したんだ
酒が入ったらもっとスムーズに話が進む進む
ようやっと、真に同盟を組むことが出来た俺たちは朝まで語り合った
その中には、俺の体トロイの悪評なども聞かされたり驚きに富んだものだったりと
バラエティに事欠かない内容のもだった…
翌朝…
…二日酔いだ…あの後朝まで酒付きで話し合ってた俺たちは出発の一時間前になって
目を覚ますその覚まされ方というのが…
「起きろー!!トロイ!!あーーーーさーーーーだーーーーぞーーーー!!!」
「大きな声を出すなんてはしたないですよ!トロイ!!少尉!!起きてください!」
耳元でこんな風に怒鳴ってきやがる、何でこんな悪意たっぷりの起こし方をしたか
それは、人のもを勝手に拝借したのと朝まで騒いでてうるさくて寝づらかった
という物であった、なるほど一昨日の件の理由がわかった、あの俺達の部屋の上って
双子にあてがわれた客室だったんだな、なら昨日の話も丸聞こえって訳かな?
「…お前ら…?」
昨日の話を聞こうと思ってソファーから起き上がったが何かが変だ
「お前らなんだその格好はどっか出かけるのか?」
最初会ったときの、大道芸人っぽい格好でもなければ、その次のレストランの時の
妙におめかしした格好とも違う、さっぱりしたデザインだが綺麗な余所行きの服だ
「出かけるも何も、私達もこの家を出るのよねぇサブリナ」
「そうです、そのことをお兄様にも伝えようと思ってきたらお酒臭いこと」
どうも話を聞くと、この双子家が火事で無くなって本来はこの家に下宿する
そのつもりだったらしい、だがどうやらもっと違う場所を見つけたようで
俺の出発にわざわざ合わせてきたのこと、あわせずささっと出て行きゃいいのに
そんな話をしている、やっとギュンターが目を覚まし双子はそのことを話す
「そうか、私としては君たちがいてくれたらこのもてあましてる屋敷も
賑やかになって、いいと思ったんだがな…でも一体どこに下宿するんだい?
せめてそれくらいは教えておくれ」
そのギュンターの言葉を聞くと何故か双子はこっちを見てくる
気持ち悪い笑顔しやがってなんのつもりだ
「その下宿先はですね、実は一度下見をしてきてるんですの」
「そう、そこってそんな広くないんだけど部屋の住人がとってもいい人で」
ほほう、もうそんな段取りをしていたのか早いな
「その方ったら、とってもお強くて優しい方なんです」
「そいつって見ず知らずの私等に、夕食をご馳走してくれたり」
?どっかで聞いたなその話
「私達のこの旅にも理由をつけて同行して下さったとっても紳士なお方なんです」
「その上、軍人で仲間を助けた英雄なんだぜ」
ギュンターは途中から察したのか妙に笑いを堪えている
俺も察したので、顔から血の気が引いている正直もうこいつらには関わりたくない
「「トロイ・リューグナー少尉の官舎です!!」」
「わかったいいよ」
…あれ?俺が言う前にえらい食い気味にギュンター君が返事したような…
「ギュンターどういうことだ!?」
とりあえず了承を得て喜んでる双子を置いといて
まず許したこの背徳者にいってやらねばならない
だがギュンターはいいじゃないかの一言
まだ酔っ払ってるのかこいつ…
「何してるのいくよ!トロイ!」
何故あいつ等が仕切ってる
「トロイさんさっさと馬車に乗ってください!」
何故あいつらに催促されなければならない
「トロイ…彼女の我がままを聞いてやってくれないか?」
そういってくれるから俺は言い返してやろうと、思ったが
そのときの顔をみて言うのは止めにした…
あの双子の我侭を聞くのは癪に障るが、この男の顔を立ててやろう
そう思えば多少のことは我慢が出来そうだ
馬車に荷物を詰め込み出発する、双子はまどから手をふって別れを惜しんでいる
…俺が乗るときだがギュンターの声が聞こえた
その言葉はきっと誰に向けられたものでもなくきっと自分へのけじめか
過去への決別だったんだろう
馬車がギュンター邸を離れると双子は別々に話すのを止め
ハモッて色々話してくるテーブルの調度品の話や照明の話だ
いつもの俺なら怒って言い返してやるところだったが
今はそんな気分でもなくただただ聞いてやることにした
笑顔を作って色々話していていたるがその目じりに光る物が見えたからな
お互い解ってたのか、それともあの声が聞こえてたのか
そのどちらかは解らないが、今はあの男の言葉を思い返しながら
帰路に着くことにした
「さよなら、エレーナ」
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